専門医制度で皮膚科専門医をとるためには、5年間の研修プログラムを受けて、専門医試験に合格する必要があります。福井県では、福井大学皮膚科を研修基幹施設とする福井大学皮膚科プログラムだけです。このプログラムでは、福井赤十字病院、福井県済生会病院、市立敦賀病院、JCHO福井勝山総合病院、福井総合病院が連携施設になっています。さらに2025年度からは、福井県立病院に、現在の金沢大学皮膚科の連携施設に加え、当科の連携施設としても加わっていただく予定です。研修中に、学会発表、症例報告論文、講習会の受講などが必要ですが、プログラムに入っていただければ、専門医が確実にとれるように教育していきますので、ご安心ください。
皮膚科医になった場合、どのように専門が決まりますか?
専門研修の最初は、皮膚疾患全般の診療を経験していただきますが、2、3年が経過すると、多くの方が自分の興味のある分野を見つけることが多いです。その後は、興味のある疾患の専門外来を担当していただくことで(新しい専門外来の開設も歓迎しています)、さらにサブスペシャリティーの実力を磨いていただきます。もちろん、サブスペシャリティーの数に制限はなく、途中で変更することも可能です。
手術に興味がありますが、皮膚科で手術はできますか?
当教室では、粉瘤などの小手術から、悪性黒色腫などの悪性腫瘍の手術(リンパ節廓清を含む)や熱傷の植皮手術まで、皮膚疾患で必要な手術のほとんどを、皮膚外科を専門にする医師を中心に行っています。
手先があまり器用でないので、手術に自信がないのですが大丈夫でしょうか?
まず、手先が器用でなくても手術はできます。手術の理屈を理解し、正しいトレーニングを積めば、必ず誰でも一通りの皮膚外科手術をこなせるようになれます。一方で、皮膚科学はとても幅の広い学問であり、専門分野も多岐にわたります。したがって一言で皮膚科専門医といっても、悪性腫瘍を中心とした外科的診療や、膠原病などの内科的診療、乾癬やアトピーなどの炎症性皮膚疾患を専門に診療する医師まで、様々です。もし将来的に、内科的診療や炎症性皮膚疾患の治療などを自分のキャリアの中心として考えたいのであれば、専門医取得に必要な最小限の外科診療のみを行うという選択肢もあります。
皮膚病理組織が難しそうなのですが、習得できるでしょうか?
1ヶ月の研修で病理組織を習得することは難しいかもしれませんが、入局された場合には、専門医試験や日常診療に必要な病理診断の力は十分につきますので、心配ありません。当教室は、先代の熊切名誉教授が皮膚病理の大家であったこともあって、病理に詳しい指導医が在籍しており、毎週火曜日の病理カンファレンスにおいて、しっかりと指導いたします。皮膚病理に興味のある方は、勉強を積むことでより正確な診断が出来るようになりますが、病理にあまり関心のない方でも、専門医に合格するレベルの基本を身に付ければ十分に皮膚科医としてやっていけますので、ご心配ありません。
研究に興味があるのですが、大学院に入るにはどうすればよいですか?
皮膚科は比較的重症の患者さんが少ないので、外来や病棟の診療が終わってからでも研究の時間が確保しやすいです。また、近年は皮膚疾患の免疫に関する研究が盛んですが、当教室ではマウスを用いて様々な皮膚疾患の病態を免疫学的に解析したり、患者データを用いた臨床研究を行っています。大学院の研究は、当教室で臨床を行いながら並行して進めていただきます。このため、入学時期の指定はありませんが、専門医を取得してからではなく、できるだけ早い時期に大学院に入って、臨床と研究の両方を発展させていくことをお薦めいたします。また、学内外の教室や企業との共同研究も、今以上に促進していきます。大学院の4年間は、原則として大学(状況によっては、実験に通える範囲の関連病院に1年間出向することあり)で働いていただきます。大学院での研究の経験は、きっと忘れられない貴重なものとなり、その後の臨床にも必ず役立ちます。
研究には興味がなく、臨床だけをやりたいのですが、それでも大学に入局できますか?
もちろんです。当教室では、それぞれの価値観を尊重しております。大きな可能性を持つ皆さんには、一度は研究の経験をされることが、その後の臨床のスケールを大きくしてくれます。ただ、どうしても研究をしたくないという方は、臨床を一生懸命やっていただけば、それは結構なことです。ちなみに、最初は研究に興味がなかったものの、他の先生が楽しそうに研究をしているのを大学で見て、大学院に入る方もいます。
心配ありません。医局員は半日の外勤を週に2回行っており、大学の給与以外にそれらの病院からも報酬をいただくことができます。皮膚科の報酬が、他の科と比べて安いということはありません。
カレンダーの休日以外に、年間計10日間の休暇をとるように義務付けています。休みもしっかり取って、リフレッシュしてしっかり働いていただきたいと思います。前述しましたが、このリフレッシュ休暇以外にも、本人やご家族の緊急の用件などには、適宜対応しています。
将来、子供を産んで育てるときに、産休や育休はどれくらいとれるのでしょうか? 仕事と育児の両立ができるか心配です。
現在の教室のルールでは、産休と育休を併せて最長で1年間まで、休みをとることができます。また家庭の状況などによって、勤務形態についても相談に応じます。全国の皮膚科医の約半数は女性です。特に20代では7割が女性と言われています。この理由は、皮膚科の仕事が女性にも向いている面があったりするため、家庭と両立しやすいからではないかと思われます。お子様の学校行事や看病、本人の病気などの場合は、医局長の了解のもとで前述のリフレッシュ休暇とは別に休むことができますので、ご安心ください。産休や育休が遠慮なくとれる環境を整備し、育児をしながらでも専門医を確実にとっていただけるように、教室全体で指導していきます。なお、近年は女性だけに育児を負担させないように、男性が育児休暇を取得するケースもあります。
将来、福井県内で病院勤務、または開業したいのですが・・
福井県は、歴史的に皮膚科医が非常に少ない県で、病院の常勤医も十分ではありません。医局員はまだまだ足りず、病院からの医師派遣の要請に十分応えられていない状況です。開業に関しましても、福井市内ですらまだ十分とは言えず、特に郊外では不足しています。このため、1日に200名以上の患者さんが来院して、忙しすぎて困っているという施設も少なくありません。皮膚科は極端なことを言えば、顕微鏡ひとつあれば診療が可能な科で、開業もしやすいという利点があります。また、実力があれば、病院に負けない診療や手術が可能なのも、皮膚科ならではです。
近年、海外留学を希望する方は減少傾向にありますが、高い向上心を持って、ぜひ海外の施設にも飛び込んで行っていただきたいと思います。一方で、国内の他施設に留学したいという方は増えており、さまざまな施設で学んだ上で戻って来ていただきたいと考えています。留学の目的は、臨床でも研究でも、興味のある分野で構いません。教室内だけでなく、他施設におけるその分野のエキスパートのもとで指導を受けることで、さらに一段と成長することを期待しています。やる気のある方には、積極的にチャンスを提供していきたいと思います。